The Noble Qur'an Encyclopedia
Towards providing reliable exegeses and translations of the meanings of the Noble Qur'an in the world languagesJoseph [Yusuf] - Japanese translation - Saeed Sato
Surah Joseph [Yusuf] Ayah 111 Location Maccah Number 12
アリフ・ラーム・ラー[1]。それは、解明する啓典[2]の御徴(アーヤ*)。
本当にわれら*はそれを、あなた方が(その意味を)弁えるべく、アラビア語のクルアーン*として下した。
(使徒*よ、)われら*はこのクルアーン*をあなたに啓示することで、あなたに最良の物語を話して聞かせる。実にあなたはそれ以前、(このような話には、)無頓着な者の類いだったのだが。
ユースフ*が、自分の父親(ヤァクーブ*)に(こう)言った時のこと。「お父さん、本当に私は(夢で)十一個の星と、太陽と、月を見ました。私はかれら[1]が、私にサジダ*するのを見たのです」。
彼(ヤァクーブ*)は、言った。「我が息子よ、お前の夢を兄さんたちに話してはならない。そうすれば彼らは、お前に悪だくみをする。本当にシャイターン*は、人間への紛れもない敵なのだから。
そして(、お前に正夢を見せて下さったのと)同様に、お前の主*はお前を選び抜かれ、お前に話の解釈[1]をお教えになり、お前とヤァクーブ*の一族にその恩恵を全うされる。ちょうどかれが以前、お前の二人の祖イブラーヒーム*とイスハーク*に対してそれを全うされたように。本当にお前の主*は、全知者、英知あふれる*お方」。
ユースフ*とその兄弟(の間に起きた話)には、確かに(それについて)尋ねる者たちにとっての御徴[1]があった、
彼ら(ユースフ*の兄たち)が(密談して、こう)言った時のこと(を思い起こせ)。「本当にユースフ*とあいつの弟[1]は、私たちよりもお父さんに愛されている。私たちは多勢であるというのに。本当にお父さんは全く、紛れもない迷妄の中におられる。
ユースフ*を殺してしまえ。それか、(どこか辺鄙な)土地に放り投げてしまえ。(そうすれば、)お父さんの顔はあなた方だけに向けられるし、あなた方はその後で正しい民となる[1]のだ」。
彼らの内にある者が、言った。「ユースフ*を殺さず、井戸の奥底に投げ入れてしまえ。(そうすれば、旅行中の)通行人たちが、あいつを拾ってくれるだろう。もし、あなた方がそうするのであれば、だが」。
(そうすることを決定した後、)彼らは言った。「お父さん、あなたが私たちにユースフ*を任せて下さらないのは、どういうわけですか?本当に私たちは、彼に対して実に親身ですのに。
彼を明日、私たちと一緒に(遊牧地へ)送ってください。(そうすれば)彼は満喫し[1]、遊ぶでしょう。本当に私たちは、まさしく彼の保護者なのです」。
彼(ヤァクーブ*)は言った。「本当に私は、お前たちが彼を連れて行くことがひどく悲しい。そしてお前たちが彼に不注意になっている時に、狼が彼を食べてしまうのではないかと怖れているのだ」。
彼らは言った。「私たちは多勢であるというのに、もしも狼が彼を食べてしまうことがあれば、本当にその時は、私たちはまさしく(役立たずの)損失者です」。
それで彼らが彼(ユースフ*)を連れて行き、彼を井戸の奥底に投げ入れることで一致した時(、彼らはそれを実行した)。われら*は彼(ユースフ*)に、(こう)啓示した。「あなたは必ずや(将来)、彼らの(策謀した)この事について、彼らに語り聞かせることになろう。彼らは(その時、あなたがユースフ*であることに)気付かないのだが」。
彼ら(ユースフ*の兄たち)は夜、泣きながら、自分たちの父親のもとにやって来た。
彼らは言った。「お父さん、本当に私たちは競争[1]しに行き、ユースフ*を荷物の所に残しておきました。すると、狼が彼を食べてしまったのです。あなたは私たちのことを信用してはくれないでしょう。たとえ私たちが、正直者であったとしても」。
そして彼らは、偽物の血の付いた彼の上着を持って来た[1]。彼(ヤァクーブ*)は言った。「いや、お前たち自身の心が(その醜悪な)事を、お前たちに惑わせて促したのである。(我が忍耐*は、)よき忍耐*[2]。アッラー*(こそ)は、お前たちの言うことに対して(私から)援助を乞われるべきお方である」。
こうして(井戸に、旅行中の)通行人たち[1]がやって来た。彼らは水汲みの者を(井戸に)やり、彼はその水桶を(井戸の中に)垂らした。(そしてユースフ*をそれに掴まって井戸の外に出てくると、)彼は言った。「おお、吉報よ!これは(素晴らしい)男の子だ[2]」。彼らは彼のことを、商品として秘密にした[3]。アッラー*は彼らが(ユースフ*に対して)行うことを、ご存知のお方であられる。
また、彼ら[1]は僅かな値で、つまり数えるほどのディルハム[2]で、彼を売り払った。彼らは、彼に関して無欲な者たちだったのだ。
(旅行者らはエジプトでユースフ*を売ったが、)彼を買ったエジプト出身の者[1]は、自分の妻に言った。「彼の待遇を、よく気遣ってやりなさい。彼は私たちの役に立つかもしれないし、また私たちは彼を子供の代わりにするかもしれないのだから」。そのように、われら*はユースフ*に(エジプトの)その地で、確固たる地位を授けた[2]。そして(それは、)われら*が彼に、話の解釈[3]を教えるためであった。アッラー*は、事を決行されるお方[4]であられる。しかし多くの人々は、(それが)分からないのだ。
彼(ユースフ*)が成熟[1]した時、われら*は彼に英知と知識[2]を授けた。そのようにわれら*は、善を尽くす者[3]たちに報いるのである。
そして彼が住んでいた家の女性(大臣の妻)が彼を(不倫へと)誘惑し、扉をきっちりと閉めて言った。「さあ、いらっしゃい」。彼は言った。「アッラー*のご加護を(乞います)。本当にあのお方は、私によくしてくださった我がご主人様なのですから。不正*者が成功することは、絶対にありません」。
そして彼女は確かに彼を望み、彼もまた、彼女に対して欲が生じた[1]。彼が、その主*の根拠[2]を目にしなかったなら(、彼もまた彼女を求めたであろう)。そのように(見せたのは)、われら*が彼から悪と醜行[3]を逸らすためである。本当に彼は、われら*の精選された僕[4]の内の一人なのだから。
そして二人は扉へと我先に急ぎ[1]、彼女は彼の上着を後ろから(引っぱって)破いてしまった。そして二人は、扉のところに彼女の主人を見出した。彼女は言った。「あなたの家人に悪さをしようとした者の応報は、牢獄に入れられるか、あるいは痛ましい懲罰の外にはありません」。
彼(ユースフ*)は言った。「彼女が私を(不倫へと)誘惑したのです」。そして彼女の家族の内の裁決者が、(こう)裁決した[1]。「もし彼の上着が前方から破れていたら、彼女は本当のことを言ったのであり、彼が嘘つきの類いということになります。
そして、もし彼の上着が後方から破れていたら、彼女は嘘をついたのであり、彼が正直者の類いということになります」。
それで彼(大臣)は、彼の上着が後方から破れているのを見ると、(こう)言った。「実に、これはあなたたち(女性)の作策略の一つである。本当にあなた方の策略は、途方もないものなのだから。
ユースフ*よ、これ(を他言すること)から身を慎むのだ。そして(妻よ、)自分の罪の赦しを乞え。本当にあなたは、過ちを犯した者の類いなのだから」。
町の婦人たち[1]は、(噂を聞いて)言った。「(大臣)閣下の奥様が、(彼女の召使いの)若者を誘惑するんですって。(彼は)彼女のことを、恋心で夢中にさせたんですよ。本当に彼女は、紛れもない迷いの中にありますわね」。
それで彼女(大臣の妻)は彼女たちの策謀[1]を聞くと、彼女たちに(使いを)送っ(て、邸宅の招待し)た。そして彼女たちに肘掛けを用意[2]し、彼女たち一人一人に(食事用の)ナイフを渡し、(こう)言った。「(ユースフ*よ、)彼女たちのところに、お出でなさい」。それで彼女たちは彼を目にした時、彼に賛嘆し、(余りの美しさに驚き、ナイフで)自分たちの手を切ってしまった。そして彼女たちは、(こう)言った。「アッラー*にご加護を(乞います)。これは人間じゃないわ!これは、高貴な天使*様以外の何ものでもないわよ!」[3]
彼女(大臣の妻)は(彼女たちに)、言った。「その人が、あなた方が彼(への恋心)ゆえに私を咎めた者です。私は確かに彼を誘惑し、彼は自らを守りました。もしも(今後、)私が彼に命じることをしなければ、彼は必ずや牢獄に入れられ、惨めな者の類いとなるでしょう」。
彼(ユースフ*)は言った。「我が主*よ、私には、彼女たちが私を招いていること(醜行)よりも、牢獄の方がましです。そして、もしあなたが私から彼女たちの策略を遠ざけて下さらなければ、私(の欲)は彼女らへと揺れ動き、私は(罪を犯す)愚か者の類いとなってしまいます」。
そして彼の主*は彼(の祈り)をお聞き届けになり、彼女たちの策略を彼から遠ざけて下さった。本当に彼こそは、よくお聴きになるお方、全知者であられる。
それから(ユースフ*が無実である)証拠[1]を目にした後、彼を暫く牢獄に入れておくことにしよう、と(いう意見が、)彼ら[2]に持ち上がった。[3]
こうして彼と一緒に、二人の若者[1]が牢獄に入った。その片方が、(こう)言った。「本当に私は(夢で)、自分が酒*(を造るために葡萄)を搾っているのを見ました」。また、もう一方は言った。「本当に私は(夢で)、自分の頭の上にパンを運ぶのを見ました。そこから、鳥が啄んでいました」。(二人は言った。)「(ユースフ*よ、)この解釈について、私たちにお告げ下さい。本当に私たちは、あなたが善を尽くす者[2]たちの類いであるとお見受けしますから」。
彼(ユースフ*)は、言った。「あなた方が貰うことになっている食事は、あなた方にやって来ることはありませんよ。それがあなた方にやって来る前に、私がその解釈について、あなた方に告げるまでは[1]。それ(解釈)は、我が主*が私に教えて下さったものの一部。本当に私は、アッラー*を信じず、来世に対してもまさしく不信仰者*である民の宗教を、捨て去りました。
そして私は、我がご先祖様たち、イブラーヒーム*とイスハーク*とヤァクーブ*の宗教に従ったのです。私たちはアッラー*(の崇拝*)に、いかなるものも並べるべきではないのですから[1]。それ(タウヒード*)は私たちと人々への、アッラー*のご恩寵からのものです。しかし人々の大半は、(その恩寵の主に)感謝しません。
牢獄の仲間たちよ、異なる複数の主[1](の崇拝*)がより善いのでしょうか?それとも唯一で*、全てに君臨し給う*お方、アッラー*(の崇拝*がより善いの)でしょうか?
あなた方はかれ(アッラー*)を差しおいて、自分たちと自分たちの先祖が名付けた名前[1]を崇めているに過ぎません。アッラー*はそれら(の崇拝*)に、いかなる(正当な)根拠も下されてはいないのです。ご裁決はアッラー*にのみ属し、かれはあなた方が、かれ以外は崇拝*しないように命じられたのですから。それが正しい宗教。しかし人々の大半は(、そのことを)知りません。
牢獄の仲間たちよ、あなた方の一人はといえば(牢獄から出ることになり)、そのご主人(エジプト王)に酒*を注ぐでしょう。そしてもう一人はといえば、磔のされ(て殺され)、鳥がその頭を啄むことになるでしょう。あなた方二人が教示を請うたことは、決定されました[1]」。
彼(ユースフ*)は、二人の内、(牢獄から)助かる者であることを知った者に、言った。「あなたのご主人様(王)のもとで、私(が無実の罪で投獄されていること)について、話して下さい」。そして(彼は牢獄から出たが、)シャイターン*が彼に、その主人に話すことを忘れさせた[1]。それで彼(ユースフ*)は数年間、牢獄で過ごすことになった。
王は言った。「本当に私は(夢で)、痩せた七頭の雌牛に食べられてしまう太った七頭の雌牛と、七本の緑の穂と、別の(七本の)枯れた穂を見た。名士たちよ、我が夢について教示してくれ。もし、あなた方が夢を解釈するのならば」。
彼ら(名士たち)は言った。「(それは、)夢まぼろしがごちゃ混ぜになった(無意味な)ものです。そして私たちは、夢の解釈など知る者ではありません」。
そして(牢獄の仲間だった)二人の内の助かった者が、(ユースフ*のことを)長い時間の(経過した)後に思い出して、言った。「私めがその解釈を、あなた方に申し上げましょう。ですから、私を(ユースフ*のもとに)お遣わし下さい」。
(彼はユースフ*の所に着くと、言った。)「ユースフ*よ、大そうな正直者[1]よ、(王様がご覧になった、)痩せた七頭の雌牛に食べられてしまう太った七頭の雌牛と、七本の緑の穂と、別の(七本の)枯れた穂(の夢)について、私たちにご教示下さい。私は人々のもとへと、(それを伝えるべく)変えるでしょう。(それは、)彼らが知るため[2]なのです」。
彼(ユースフ*)は、言った。「七年間、ずっと懸命に耕し、あなた方が収穫したものは、それを穂につけたまま置きなさい。但し、あなた方が食べる少量のものは別ですが。
そしてその(豊作の七年の)後、あなた方がそのために予め蓄えていたものを、あなた方が貯蔵する僅かなものを除いて食べ尽くしてしまう、(凶作の)過酷な七年が到来します。
そしてその(豊作の七年の)後、(雨によって)人々が救済され、(果実を)搾る年がやって来ます」。
(夢の解釈を聞いた後、)王は言った。「彼(ユースフ*)を(牢獄から出し)、私のもとに連れて来なさい」。そして彼のもとに使いが来ると、彼は言った。「あなたのご主人様のもとに戻り、(私の無実から明らかになるよう、)自分たちの手を切ったご婦人方[1]の件(の真実)について、彼に尋ねて下さい。本当に我が主*は、彼女らの策略についてご存知のお方です」。
彼(王)は(それを聞くと、婦人たちと大臣の妻を呼んで、)言った。「(その日、)ユースフ*を誘惑した時の、あなた方の件は何だったのか?」彼女らは言った。「アッラー*にご加護を(乞います)。私たちは彼に、何の落ち度も認めませんでした」。(大臣)閣下の妻は、言った。「今、真実が明るみに出ました。私が彼を誘惑したのであり、本当に彼は正直者です。
それ[1]は彼(大臣)が、私が彼を陰で騙してはおらず[2]、また、アッラー*が欺く者たちの策略をお導きにはならないというこよを、知るためなのです。
そして私は、自分自身が潔白だとは言いません。本当に人の自我というものは、我が主がご慈悲をかけて下さった者を除いては、悪をよく指図するもの[1]ですから。本当に我が主*は赦し深いお方、慈愛深い*お方です」。
(ユースフ*の無実を知ると、)王は言った。「彼(ユースフ*)を連れて来るのだ。そうすれば彼を、私にとっての特別な側近としよう」。それで(ユースフ*がやって来て)話した時、彼(王)は(ユースフ*の無実と徳の高さを知って、)言った。「本当にあなたはこの日、私たちのもとで地位高き者、(全権を委ねられた)信頼篤き者である」。
彼(ユースフ*)は、言った。「私を、(エジプトの)地の蔵相として下さい。本当に私は管理に長じた者、知者ですから」。
そのように、われら*は(エジプトの)地において、ユースフ*に確固たる地位を授けた。彼は自分が望む場所どこにでも、滞在することが出来る。われら*は、誰でもわれら*が望む者に、われら*の慈悲を授け、善を尽くす者[1]たちの報いを反故にはしないのだ。
来世の報いこそは、信仰し、(アッラー*を)畏れ*ていた者たちにとって、(現世の報い)より善いのである。
(そして不作に見舞われたため、食料を得ようと、)ユースフ*の兄たちが、(エジプトに)やって来た[1]。彼らが彼(ユースフ*)のところに入った時、彼は彼らのことが分かった。彼らは(長い時間の経過とユースフ*の変わりっぷりゆえ)、彼に気付かずにいたが。
そして彼(ユースフ*)は(彼らを気前よく歓待した後)、彼ら(のラクダ)にその荷物[1]を用意した時、言った。「あなた方の父方の弟(ビンヤーミーン)を、私の所に連れて来なさい[2]。あなた方は、私が升[3](による計量)を全うするとは、そして私が最良の歓待者だとは、思わないのですか?
そして(次回)、もしあなた方が私のところに彼を連れて来なかったら、私のもとにあなた方の(食料を量るための)升はありません。また、私のもとにも近付かないで下さい」。
彼らは言った。「私たちは彼(を一緒に連れて来ること)に関し、彼の父親を口説いてみましょう。本当に私たちは、必ずやります」。
彼(ユースフ*)は、自分の小間使いたちに言った。「彼らの物品[1]を(気付かれないように)、彼らの荷物の中に入れておきなさい。彼らが家人のもとに帰った時、彼らがそれに気付くように。彼らは恐らく、戻って来るでしょう」。[2]
そして彼ら(ユースフ*の兄たち)は、自分たちの父親のところに戻ると、言った。「お父さん、私たちに(食料を量るための)升[1]が禁じられてしまいました[2]。ですので私たちと共に、私たちの弟(ビンヤーミーン)を遣わして下さい。(そうすれば、)本当に私たちは彼への保護者でありつつ、(食料を)量(って持って来)れることになります」。
彼(ヤァクーブ*)は言った。「どうして私が、お前たちに彼(ビンヤーミーン)を任せようか?以前、私がお前たちに彼の兄を任せ(て、裏切られ)たように?(私はお前たちの保護は信用しないが、アッラー*の保護を信頼する。)アッラー*は保護者の内でも最善のお方であられ、かれは慈悲深い者たちの中でも最も慈悲深いお方」。
そして彼らが自分たちの荷物を開けた時、彼らは、自分たちの物品[1]が彼らに返されているのを見出した。彼らは言った。「お父さん、(これ以上)何を求めましょうか?これは私たちに返された、私たちの物品です。(だから安心して、ビンヤーミーンを行かせて下さい、)私たちは私たちの家族に食料を調達し、私たちの弟を保護し、(彼の分として)ラクダ一頭分の升(で量った食料)を付け加えましょう。それは(エジプトの蔵相にとって)、取るに足らない升(の量)です」。
彼(ヤァクーブ*)は言った。「私は彼(ビンヤーミーン)を、お前たちと一緒に行かせたりするまい。お前たちが八方ふさがりとならない限り、必ずや彼を連れて(戻って)来る、というアッラー*を証人とした誓約を私にするまでは」。そして彼らが、彼に対してその誓約をすると、彼は言った。「アッラー*が私たちの言うことに対し(ての証人であり)、請け負われる*お方であられる」。
また、彼(ヤァクーブ*)は言った。「我が息子たちよ、(エジプトに入る時は)一つの門から入るのではなく、別々の門から入るのだ[1]。そして私は、アッラー*(の定め)をよそに、あなた方を益することなど、少しも出来やしない。裁決はアッラー*にのみ属するのだから。私は、かれにこそ全てを委ねた*。そして(何かを誰かに)委ねる者たちには、かれにこそ全てを委ねさせるのだ」。
そして彼らが、父親の命じた所から(エジプトに)入った時、(そのことが)アッラー*(の定め)をよそに、彼らのことを益することなどは少しもなかった。ただ、(それは)ヤァクーブ*の気がかりだったのであり、彼はそれを晴らしただけなのである[1]。本当に彼はまさしく、われら*が(啓示によって)彼に教えたものによる、知識の持ち主であった。しかし人々の大半は知らないのだ。
そして彼らがユースフ*のもとに入った時、彼(ユースフ*)はその弟(ビンヤーミーンと二人きりになり、彼)を自分の方へ抱き寄せた。彼は(ビンヤーミーンに)言った。「実に私こそは、お前の兄なのだ。ならば彼らが(昔、私に対して)行っていたことゆえに、悲嘆に暮れるのではない」。
そして彼ら(のラクダ)にその荷物を用意した時、彼(ユースフ*)は自分の弟の荷物に(、こっそりと)器を入れ(させ)た[1]。それから(彼らが出発しようとした時、)呼びかける者が(こう)呼びかけた。「隊商(の人々)よ、実にあなた方はまさしく盗人だ!」
彼ら(ユースフ*の兄弟ら)はその(呼ぶ)者たちの方に向かい、言った。「何が無いのですか?」
彼ら(呼ぶ者と、その取り巻き)は言った。「王の器が無いのだ。そしてそれを持って来た者には(褒美として)、ラクダ一頭分の(食料が入った)荷をやろう」。(呼ぶ者は、言った。)「私がその保証人だ」。
彼ら(ユースフ*の兄弟ら)は言った。「アッラー*に誓って、あなた方は確かにご存知になったでしょう。私たちが(エジプトの)地を腐敗*させるために来たのではなく、私たちが盗人でもなかったということを」。
彼らは言った。「では(あなた方のもとでの)、その者(盗人)の報いは何か?もし、あなた方が嘘つきだったとしたら(、だが)」。
彼ら(ユースフ*の兄弟ら)は言った。「その者(盗人)の報いは、荷物の中にそれ(器)が見つかった者、彼自身がその報いとなる[1]ことです。このように私たちは、(私たちの法において、盗みを犯した)不正*者たちに報いるのです」。
(ユースフ*の兄弟らはユースフ*のもとに戻され、)彼(ユースフ*)は、彼の弟の荷物入れの前に、彼らの荷物入れ(の検査)から始めた。それから、彼の弟の荷物入れから、それ(器)を取り出した。このように、われら*はユースフ*に対して(、ビンヤーミーンを手許に留めておけるよう、)取り計らった。彼はアッラー*がお望みにならない限り、(エジプト)王の決まりにおいて、彼の弟を引き取ることが叶わなかった[1]のだから。われら*は、われら*が望む者の位を上げる。そしてあらゆる知者の上には、(更なる)知者がいる[2]のだ。
彼ら(ユースフ*の兄ら)は言った。「もし彼(ビンヤーミーン)が盗みを犯したのなら、以前、彼の兄(ユースフ*)も確かに、盗みを犯した[1]のです」。そしてユースフ*はそれ(彼らの嘘)を心の内に隠し、彼らに対してそれを露わにはしなかった。彼は(心の中で)言った。「あなた方は(あなた方が貶している者)よりも、悪い地位にあるのだ。そしてアッラー*はあなた方の言うことを、最もよくご存知であられる」。
彼ら(ユースフ*の兄ら)は言った。「閣下、実に彼には、老いた年配の父親がいるのです。ですから彼の代わりに、私たちの誰か一人をお取り下さい。本当に私たちは、あなた様を善人とお見受けしますから」。
彼(ユースフ*)は言った。「私たちが、私たちの(盗難)品をその手許に見出した者以外を捕まえるなどということから、アッラー*のご加護を(乞う)。そうしたら、本当に私たちはまさしく不正*者です」。
そして彼(の返事)に絶望すると、彼らは自分たちだけになって密談した。彼らの最年長者は言った。「一体あなた方は、お父さんが確かに、アッラー*を証人とする誓約[1]をあなた方にさせたのを、知らないのか?(これ)以前にも、あなた方はユースフ*のことで不手際を犯したのだ。そして私は、お父さんが私(のエジプト出発)をお許しになるか、あるいはアッラー*が私にご裁決[2]を下されるまで、この(エジプトの)地を離れまい。かれは裁決者の内でも最善のお方なのだ。
お父さんのもとに戻り、(こう)言うのだ。『お父さん、本当にあなたの息子(ビンヤーミーン)は盗みを働きました。そして私たちは、自分たちが知ったこと以外は証言していない[1]のであり、知り得ないことにおいてまで保護する者ではなかったのです[2]。
また、私たちがいた町(エジプトの人々)と私たちが共に旅した隊商(の同行者ら)に、(事の真相を)お尋ねください。本当に私たちは、まさしく正直者なのです』」。
(彼らは父親のもとに帰ると、事の一部始終を話した。)彼(ヤァクーブ*)は言った。「いや、お前たちの(悪に傾きやすい)自我が(その)事を、お前たちに惑わせて促したのである。(我が忍耐*は、)よき忍耐*[1]だ。アッラー*は彼らを全員[2]、私へと連れ戻して下さるかもしれない。本当に彼は全知者、英知あふれる*お方なのだから」。
そして彼らから背を向け、言った。「ユースフ*への我が悲哀よ!」彼の両目は悲しみゆえに白く濁り[1]、彼は(募る悲しみを)押し殺した。
彼ら(息子たち)は言った。「アッラー*に誓って、あなたは身を滅ぼしそうになるまで、あるいは(実際に)破滅する者の類いとなるまで、ユースフ*のことを思い続けます(か)!」
彼(ヤァクーブ*)は言った。「私は自分の苦悩と悲しみを、アッラー*のみに訴えるのだ。そして私はアッラー*によって、お前たちの知らないこと[1]を知っている。
息子たちよ、(再びエジプトへ)赴き、ユースフ*とその弟を探索せよ。そしてアッラー*のご慈悲に、失意してはならない。本当にアッラー*のご慈悲に失意するのは、不信仰の民*だけなのだから」。
彼らは(エジプトへと向かい、)彼(ユースフ*)のもとに(参じて)入ると、言った。「閣下、私たちと私たちの家族を(旱魃と飢饉の)災害が襲い、私たちは僅か(で粗悪)な物品を携えて来ました。ですから、私たちのために升[1]を満たし、私たちに施して下さい。本当にアッラー*は、施す人々にお報いになりますから」。
彼(ユースフ*)は言った。「一体あなた方は、あなた方が無知な者たちであった時[1]に、ユースフ*とその弟に対して自分たちがしたことを知っているのですか?」
彼らは言った。「本当に、あなたは本当に、ユースフ*なのですか?」彼は言った。「私はユースフ*で、これが我が弟です。アッラー*は私たちに、確かに(別離の後の再会という)お恵みを授けて下さいました。本当に誰であとろうと、(アッラー*を)畏れ*、忍耐*する者、実にアッラー*は(そのように)善を尽くす者[1]たちの褒美を無駄にされることがないのです」。
彼らは言った。「アッラー*に誓って、アッラー*は確かにあなたを、私たちよりもお引き立て下さいました。そして本当に私たちはまさしく、過った者たちだったのです」。
彼は言った。「この日、あなた方に咎めはありません。アッラー*があなた方を、お赦し下さいますよう。そして、かれは慈悲深い者の内でも、最も慈悲深いお方です」。
(それから父ヤァクーブ*の話を聞くと、ユースフ*は彼らに言った。)「この私の上着を携えて(再びお父さんの所へ)行き、それをお父さんの顔に投げかけなさい。彼は、眼が見えるようになるでしょう。そしてあなた方の家族を皆、私のもとに連れて来るのです」。
隊商が(ユースフ*の上着と共にエジプトを)出発した時、彼らの父(ヤァクーブ*)は(周りに)言った。「本当に私は、まさにユースフ*の匂いを感じる。あなた方が私のことを、愚か者扱いするのでなければ(、私のことを信じたであろうに)」。
彼ら(ヤァクーブ*の周りにいた者たち)は、言った。「アッラー*に誓って、本当にあなたはまさしく、(まだ)昔の迷い[1]の中にありますね」。
それで(ヤァクーブ*に)吉報を伝える者が到着した時、彼はそれ(ユースフ*の上着)を彼の顔に投げかけ、彼の視力は戻った。彼(ヤァクーブ*)は(、周りの者たちに)言った。「一体、私はお前たちに言わなかったのか?本当に私はアッラー*によって、お前たちの知らないこと[1]を知っている、ということを?」
彼ら(ユースフ*の兄たち)は、(エジプトからヤァクーブ*のもとに戻って来ると、彼に)言った。「お父さん、私たちのため、私たちの罪の赦しを乞うて下さい。本当に私たちは、過った者たちだったのですから」。
彼は言った。「お前たちのため、そのうち我が主*にお赦しを乞おう[1]。本当にかれこそは、赦し深いお方、慈愛深い*お方なのだから」。
そして彼ら(全員)が(エジプトの)ユースフ*のもとにやって来た時、彼(ユースフ*)は両親を自分の方へ抱き寄せて、言った。「安全にーーアッラー*がお望みならーー、エジプトにお入り下さい」。[1]
そして彼は自分の両親を御座の上に上げ(て自分の傍に座らせ)、彼ら(両親と十一人の兄弟)は、彼に向かってサジダ*[1]した。彼は言った。「お父さん、これは我が主*がまさに実現して下さった、以前(小さい頃に)私が見た夢[2]の解釈です。かれ(我が主*)は私に、本当によくして下さいました。私を牢獄から出して下さり、シャイターン*が私と私の兄たちの間を突い(てこじれさせ)た[3]後、あなた方を辺境の地から連れて来て下さったのですから。本当に我が主*は、かれがお望みになること(の遂行)に霊妙な*お方であられます。本当にかれは全知者、英知あふれる*お方。
我が主*よ、あなたはまさしく私に王権の一部を下さり、私に話の解釈[1]を教えて下さいました。諸天と大地の創成者*よ、あなたは現世と来世における、我が庇護者*です。私を服従する者(ムスリム*)としてお召しになり、正しい者*たちの仲間入りをさせて下さい」。
(使徒*よ、)それ[1]は、われら*があなたに啓示する、不可視の世界*に属する消息の一部。そして彼ら(ユースフ*の兄たち)が策謀しつつ、彼らの事[2]を示し合わせた時、あなたは彼らのもとに(立ち合わせて)はいなかったのである。
そして(使徒*よ、)人々の大半は、ーーたとえ、あなたが(彼らを信じさせようとして)躍起になったとしてもーー、信仰者とはならない。
また、あなたはそれ[1]ゆえに、彼らにいかなる見返りも求めてはいない。それは全世界に対する教訓に、外ならないのだから。
諸天と大地における、いかに多くの(アッラーの唯一性*と御力を示す)御徴を、彼らは通り過ぎ(目にし)ていることか?それらに対して背を向けながら?
また彼らの大半は、シルク*の徒であることなくして、アッラー*を信じることがない。[1]
一体彼らは、アッラー*の懲罰である、(彼らを)覆い尽くすものが、自分たちに襲いかからないと安心していたのか?あるいは彼らが気付かぬまま、(復活の)時が彼らのもとに突然やって来ることはない、と?
(使徒*よ、)言え。「これは、我が道。私も、私に従った者たちも確証に基づき、アッラー*(のみへの崇拝*)へと招く。アッラー*に称え*あれ、私はシルク*の徒の類いではない」。
そして(使徒*よ)、われら*があなた以前に(使徒*として)遣わしたのは、われら*が啓示を下す、町の住民の男性たち(人間)たち以外の何者でもなかった[1]。それで一体彼ら(不信仰者*たち)は、地上を旅し、彼ら以前の(不信仰)者*たちの結末がいかなるものであったかを見なかったのか?来世の住まいこそは、(アッラー*を)畏れる*者たちにとって、(現世など)より善いのである。一体あなた方は、分別しないのか?
(使徒*よ、過去の使徒*たちも嘘つき呼ばわりされたが、すぐ勝利が訪れたわけではなかった。)やがて使徒*たちが(、自分の民はもはや信じることはないという)大きな失意に陥り、(民が、自分たちは使徒*たちに)確かに嘘をつかれた[1]のだと思った時、彼ら(使徒*たち)のもとにわれら*の勝利が到来し、われら*が望む者は救い出されたのだ。かれの猛威(という懲罰)が、罪悪者である民から遮られることはない。
彼ら(ユースフ*とその兄弟たち)の物語の中には確かに、澄んだ理性の持ち主にとっての教示があった。それ(クルアーン*)は、でっち上げられた作り話などではない。しかし(それは)それ以前の者[1]の確証、全ての物事[2]の解明、導きであり、信仰する民への慈悲なのである。